二足のわらじ

例年以上に暑い5月をなんとかやり過ごし、涼しくなる雨の季節が待ち遠しいこの頃です。

普段は暑い時間は外を避けてなるべく家で織っているのですが、今年はほぼ毎日学校へ通うという日々でした。

というのも今、今年の展示に向けての制作は続けつつ、アジェンデ美術学校で織物を教えています。

3月にアジェンデ美術学校で40年に渡り織物を教えてきたアガピト先生がお亡くなりになり、その少し前から急遽先生の代わりとして織物のクラスを受け持つことになったのでした。それは突然のことで、出来る、出来ない以前にやるしかないという、なかなか我武者羅な毎日でした。

まさか自分が再びアジェンデ美術学校(Instituto Allende)に、しかも教える側として戻ってくるとは思ってもみませんでしたが、いざやってみると、いろいろ新鮮で、学ぶことも多い。学生や生徒さんに助けられつつ、時に失敗しつつも、思った以上に楽しんでいるところです。

20年近く前、当時私はスペイン語もほとんど分からないままにメキシコに来て織物を学んでいたので、今回自分が生徒さんに説明をしなくてはいけなくなった時に、改めて言葉にして理解しなおす作業が必要でした。そして、改めて織りの仕組みというか、この20年近く制作してきた中で、無意識にこなしてきた作業がものすごくクリアに見えてきたことに驚いたのでした。言葉の力!

そしてまた、すっかり忘れていたテクニックとか、伝統的な柄とかを思い出したり、試してみたりしていて、原点回帰というか、温故知新というか、全く違う角度からサンミゲルの織りを学びなおしているような状況であり、これまで好きなように織っているうちに凝り固まってしまっていた自分の頭のアイデアがほぐれていっているような感じがします。

学校に通ったのは1年ほどだったのですが、ことあるごとに先生のクラスにはおしゃべりしに行ったり、色染めや整経を手伝わせてもらったりしていました。教室のあちこちに先生との思い出が散りばめられていて、些細な会話や、先生の振る舞いを思い出しては、本当にいろいろなことを教えていてくれたのだなぁと改めて思います。この二か月はそういうことを振り返る時間でもありました。

そしてこれからも、織ることを通して、アガピト先生やそのまた先生方、職人さんたちが伝えて繋げてきたことを学び続けるのだろうなとも感じています。そして今、それを私が次の誰かに伝える機会をもらえたこと、先生が残してくれた大きな宿題だと思って、頑張ってみようという気持ちになったのでした。

もちろん、自分の織りを制作したいという気持ちはこれっぽっちも消えてはいないので、制作と学校で教えることを両立しようということにしました。時間的にも頭のモード的にもうまくリズムをとって、スイッチを切り替えながらいったり来たり出来るようになるのが目標です。二足のわらじを履きこなす!すでに、改めて学びなおしていることが、次の織ってみたいデザインにつながったりしていて、今年もまたどんなタペテが織りあがるのか自分でも楽しみです。

毎週月・火・水の午後のクラスはどなたでも受講できるオープンクラスなので、興味のある方はぜひ学びにいらしてください(笑)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA