マエストロ・フェリックス

サン・ミゲル・デ・アジェンデの文化センター El Nigromante (通称ベジャス・アルテス)にて、2013年に85歳でお亡くなりになられた織物のマエストロ、フェリックス先生の展示が開催されています。

フェリックス先生は、わが師アガピト先生の先生でもあった方で、幼いころから織物を学び、50年以上に渡って、ベジャス・アルテスで織物を教えておられました。私が今使っている織り機の元の主でもあります。

サンミゲルに来たばかりのころ、たまにベジャス・アルテスの織物クラスに遊びに行くと、もう80歳くらいだった先生が低音ボイスとなかなか鋭い眼光で叱咤激励しながら、生徒のみなさんが織っている間をゆったりと歩いていた姿を思い出します。

展示では、フェリックス先生が織物プロセスを実演しながら説明しているビデオが流れていて、シーンとした空間にあの先生の低い声、ザッザッと手が縦糸をかすめる音なんかが響いてきて、なんだかふっとあの頃が蘇ったような気持になりました。

サンミゲルのベジャス・アルテスには、メキシコ人壁画家の巨匠シケイロスが巨大な壁画を描いた空間があるのですが、おそらく1950年前後、まだ若かったフェリックス先生がシケイロスが壁画を描いていた時に見たエピソードを話してくれたこともありました。シケイロス、いつも酔っ払っていたと!(ベジャス・アルテスにはその当時、楽しそうに壁画チームのメンバーで野球をしているシケイロスの写真も飾られています。)

先生の人生を綴る写真の数々、ひ孫のために織った小さなポンチョ、若かりし日のフェリックス先生の笑顔、長年使っていた道具、優しく楽し気に語る声、そして、先生が織ったタペテ。

先生の人生と織物が交わってきた年月が暖かく示されていて、フェリックス先生のそのまた先生たちから、フェリックス先生を通して、今織物をやっている人たちへと続く途切れない時間を感じることのできる展示でした。

”Andale” とつぶやきながら、ふっと煙草をふかしに外へでるフェリックス先生の後ろ姿が今もそこにあるような、ゆったりとした変わらない時間が流れていました。

展示は5月28日まで。サンミゲルの織物を知ることのできる素晴らしい展示です。

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