先週、毎年恒例の糸の買い出しに行ってきました。
コロネオという町まで片道約5時間、バスの旅です。
コロネオはミチョアカン州とグアナファト州、ケレタロ州のちょうど境にある小さな町です。
サンミゲル最寄りの大都会、ケレタロから1時間に1本ある、コロネオ行きのバスに揺られて、2時間ほどで到着です。
コロネオからケレタロへ通勤・通学する人々が利用するバスは、いつも混んでいて、人が乗り降りするたびに止まってはゆっくりと進んでいきます。
糸を買う工場は、バスが通る国道から脇道に入った先にあるのですが、今回はなんとなく、国道から歩いて行ってみようという気になったのでした。
ゆるやかな丘が続く、緑が美しい、のどかな風景の中を歩くのは気持ちがいいと思ったのです。
ちょうど工場へつづく脇道あたりでバスを降りたいと思って、運転手さんや隣の席のおばちゃんにちょこちょこと、どこで降りたらいいか聞いたりしていたら、おばちゃんが池の先で降りたらいいわよねぇ、とうしろの席のおばちゃんに意見を求めて、それを聞いた若者が、あーでもないと言ったり、耳を澄ませていたおじちゃんが、こーでもないと言ったり、気が付いたら周りの席の方たちがみんなで必死に話し合ってくださっていたのでした。
先に降りていくおばちゃんたちが、運転手さんにこの子のことを頼むわよ、みたいに仰ってくれたり、
運転手さんに気づいてもらいやすいように、一番前の席を私に明け渡してくれたり、
あまり外国からの観光客も来ない、小さな町に行く私を嬉しそうな目で見たり、
糸を買いに行く、と言ったらとても誇らしげに、その地元の工場のことを話してくれたり。
とてもあたたく、素朴な心の交感があって、とても嬉しい気持ちになったのでした。
私が毎年、コロネオまで糸の買い出しに出かけるのは、サンミゲルではもう糸が手に入らないことが大きな理由ですが、それだけではなく、コロネオの糸の色のバリエーションの豊富さ、質のよさ、それからコロネオののどかで暖かな雰囲気が好きだからです。
1年に1度しか買いに行かないにもかかわらず、名前を覚えて待っていてくれる。
いつも30キロの糸を1人バスで買いに行く私に、町のバスターミナル、時にはついでだから、とケレタロまで車で送ってくれる。
いつもいい糸をありがとうございます、と言ったら、愉快な誇らしげな笑顔を返してくれる。
そういう人々が作っている糸です。
私が作るクッションカバーやバッグ、コースターなどの小物は、全部このコロネオの糸を使って、織っています。
糸を作っている、やさしい人々のことも、伝わったらいいな。
あたたかな気持ちで手に取っていただけると嬉しいです。