今年もメキシコシティに行ってきました。目的は「MEXICO TEXTIL」の展示です。2018年、2019年、そして2022年と続く、全4回シリーズの最終回で、南部、中央ときて、今回はメキシコの北部のテキスタイルにフィーチャーした展示でした。
メキシコの北部はかなり広大で、中央からも遠く、気候も文化も独特なので、どんな織物の展示になるのかとても楽しみにしていました。
北部の人々の民族衣装やかごなどの生活道具とともに、(走る人としても知られる)タラウマラ族の人々の古い写真なども展示され、その暮らしぶりが垣間見れるような展示になっていました。民族衣装は刺繍や色が華やかではあるものの、割と洋服っぽいのが多い印象でした。あと、かっこいいボディペインティング。この白い顔料はなんなのか気になるところです。
そして、もちろん織機もありました。Telar de piso 直訳すれば床織機。話を聞いた感じだと、腰機や地機のようだけれど、縦糸がぐるりと一周張ってあって、なんか見たことない感じ。実際織っているところを見てみたいものです。
このシンプルな織機で、おおらかに紡がれた羊毛を使って、幅1m50㎝はありそうな毛布を織るというのだから驚きます。(時には二人で同時に織っていくこともあるそうです。)展示されている毛布は柄もほとんどなく、直線が直線ですらない(糸の太さが均一ではないので)のだけれど、じっと見ているとこのような機と糸の歪みがもたらす織りが地層のようなうねりにも見えてきて飲み込まれそうになりました。素朴とか原始的であるといえばそうなのだけれど、それ故に地球とか自然とか宇宙とかとより近い感じすらしました。
また北部の織物といえば Saltillo や Zacaatecas のサラぺです。16世紀にスペイン人によってもたらされた高機で織られるようになったサラぺ。特に19世紀から20世紀前半に織られたもののデザイン、技術、完成度は本当にすごくて魂消ます。緻密で、正確で、複雑で、人の手が生み出しとは思えないような精巧さで、これまた宇宙への別の扉が開かれた感じがしました。
そして何よりも、この全く対照的な織物たちを並べて展示をしているというのが、またなんとも憎いなぁ!と思いました。
2018年の一回目の「MEXICO TEXTITL」からコロナ禍を経て足掛け6年。毎回違うテーマで、いろいろなメキシコの織物文化の側面を見て、楽しんで学ぶことができました。本当に感謝。多分この展示を一番楽しんだうちの一人だろうと自負しています!