サン・ミゲル・デ・アジェンデのタペテのこと。
サン・ミゲル・デ・アジェンデのタペテには様々な伝統柄がありますが、その中でも最も難しく、限られた職人さんにだけ織られてきた模様が「サンミゲル」です。
いつ頃から織られてきたのかは不明ですが、私の先生が織物を習い始めた60年近く前は、「サンミゲル」を専門に織る職人さんがいたそうです。
前に先生に聞いた話によると、1日で100センチ×200センチのタペテ一枚を仕上げるマエストロもいたそうで、これはとんでもないスピードです。
先生もどうやってそんなことが可能だったのか、わからないよ~ハッハッハと笑っていたけれど、都市伝説的なネタなのかもしれない。
織るのは複雑で、時間もかかるので、誰でも織れるという柄ではないそうで、今ではあまり見かけることもなくなってしまいました。伝統的な糸で織り続けている職人さんもわずかだと思います。
私もInstituto Allende(アジェンデ美術学校)に通って織物を学んでいた時に、先生に頼んで「サンミゲル」を織らせてもらいました。
先生の織った、染めていない羊毛を使ったグレー、茶、白のシックな「サンミゲル」を見て憧れていたのです。
学校にある一番大きな織り機を使わせてもらって、160センチ×250センチくらいの大きなタペテを織りました。確か一ヵ月くらいかかったような覚えがあります。これは今でも宝物。
伝統柄と言っても、かなり自由に織るのがサン・ミゲル・デ・アジェンデのやり方なので、人それぞれ個性がでて面白いです。
我が師匠、Agapito Jiménez Rodríguez氏は同系色でまとめるのが好みのスタイルのようです。
これはちょっと太めの糸を使っているのか、模様が厚く、大きな花がひらいたみたい。
Jesús Labrada氏の織る「サンミゲル」は色とりどりでお花畑のようです。
Jesús Labrada氏は、Agapito氏と同年代のベテランの職人さんで、Jesús氏の織るタペテは、伝統と自由さのバランスが素晴らしく、これぞサン・ミゲルのタペテよ!という感じがとてもかっこいいのですが、なかなかお目にかかる機会がないのが残念です。
同じ柄でも色の置き方、糸の太さによってだいぶ見えかたが違う、という事でちょっと前に細い糸で「サンミゲル」に挑戦してみました。
普段、私は伝統柄は織らないのですが、職人さんたちが使っている糸よりもさらに細い糸を使って織ったら模様がどのように見えるのか、試してみたかったのです。
とても渋く、かっちりして、かっこ良くできたのではと思っています。
伝統と個性と自由が入り交じった、おおらかなサン・ミゲル・デ・アジェンデのタペテ。同じだけど同じじゃないのが織物の面白いところです!