私が織物を学んだ、Instituto Allende という学校で、我が師匠、アガピト先生による草木染めのクラスが開講されています。私もアシスタントとして参加させていただいております!
メキシコの、そして、ここグアナファトの植物を主に使った染色です。
メキシコの染料としてよく知られているものに、ウチワサボテンにつくカイガラムシの一種で、美しい赤に染まるコチニールなどありますが、今回、 特に興味を惹かれた植物に、Pirúl という、ウルシ科の常緑樹があります。日本名ではコショウボクというようです。サンミゲルでは街路樹として、また公園などいたるところで目にすることのできるとても身近な木です。
Instituto Allende(アジェンデ美術学校)の中庭にも大きな Pirúl の木が植わっていて、葉を集めるところからクラスは始まりました。上へ上へと伸びていく木の生長を妨げないように、手の届く低いところにある葉を集めるようにとのことでした。
新鮮な若く瑞々しい葉がたくさん集まりました。
この土地の人々によって蓄えられた、豊富な植物、薬草の知識を知ることは、とても面白いです。Pirúl は、先住民の人々やシャーマンが儀式のときなどに使うそうで、浄化作用・癒しの効果などがあるとのこと。
染めている間中、とてもいい匂いがしていて、気持ちがよくリラックスしていた私は、その作用を体感していました。
また、今回の染めには使いませんでしたが、木になっている赤い実は甘く、砂糖のない時代、砂糖のない地域では砂糖の代わりに使われていたそうです。赤い皮を剥いて出てくる実の真ん中は苦いので、噛まずになめているとほんのりとした甘みが口の中に広がりました。
染めた糸を乾かすのもPirúl の木陰で。真ん中の黄色が Pirúl で染めた糸です。
さらに一晩浸けておいたものは渋く柔らかい、黄緑色になりました。
草木染めは、すべてが繋がっていく感じがします。
そこにある草木を少し頂戴して、色をもらう。
植物の状態や季節や温度や時間を見ながら、色を待つ。
今回、匂いもとても大きな魅力であることに気付きました。
五感全部で草木と対話しているような気持ちです。
柔らかい日差しが差し込む木陰で、こんな色が!とか、こんな効果が!とか、驚きつつ、学びつつ過ごす朝はとても気持ちよく充実していました。